親分の事件簿~土謎編~
「最近、朝晩に馬がはく息が白くなったなー、いよいよ冬だな」
「てーへんだーっ、てーへんだーっ」
ハチがバタバタと走りになっていない、足取りで土間に転がりこんだ。
「どーしたいハチっ!久しぶりに現れたと思ったら、前回と同じ登場のしかたじゃねーか。」
親分は慌てずハチの顔を見下ろした。
「いやーっ、本当に大変なんですよ。」
ハチは親分の顔を見る事もできない程、息が上がっていた。
「南町庄屋の庭でサツキやらツヅジが枯れ始めて、手入れ人がしょっ引かれちまった。」
「ふ~ん、どこの手入れ人だい?」
親分は冷静に答えを待った。
「へい、緑の牧場(グリーンファーム)の職人です。」
ハチの息は大分回復していた。
「あそこの職人なら間違いは無いはずだが・・・・」
「よし、現場に行ってみるか。」
親分は羽織を肩にかけ、土間を蹴って外に飛び出した。ハチはやと戻った息をまた切らすことになった。
「なるほど、少し元気が無くなってきているな・・・・」
「・・・ドウダンツツジは紅葉の時期だから、赤くなって来てもおかしくはねーが、少し元気がねーな。」
「なるほど・・・こいつはかなり、ひどいな。」
・・・・
「んっ!?」
「おっ、さすが親分、こいつに目が止まりましたね。なんでも、こいつは南蛮渡来で庄屋がかなりの高値で購入したオリーブって木らしいですよ。」
ハチがここぞとばかりにウンチクを述べた。
「ばーたれっ!そんな事は知ってるよっ!」
親分はハチには目もくれず、オリーブを見続けて言った。
「こいつ、やけに元気だな・・・」
「これは・・・?」
「あっ、あー、親分、何やってるんですか、土なんかなめてーっ!」
親分は、土を舌で転がした。
「なるほどー・・」
「へっ?何がなるほどなんですか?」
ハチはきょとんと親分を見ている。
「ハチっ、庄屋を呼んでこいっ!謎が解けたぞっ!」
「へっ、へい!」
庄屋がハチの後に続いてやって来た。
「ほー、これはこれは、園芸家の親分さんじゃありませんか。」
庄屋は満面の作られた笑みで親分と挨拶を交わした。
「庄屋、ずいぶん立派なオリーブじゃねーか。」
親分はまたオリーブに目を移した。
次回に続く
あとがき
さー、皆さん解りましたか?ツツジやサツキが元気が無くなった分け?
次週土曜日は回答編です。お楽しみに
ブラックドッグ・セレナーデ