やさしい花
「やさしい花はありますか?」
小さな園芸店にそう言って入ってきたのは小さな女の子でした。
「やさしい花?・・・」
店員さんは首を傾げました。
「うん、やさしい花、やさしい花がほしいの」
まっすぐな声でそう答える女の子に、店員さんは戸惑うばかりです。
やさしい花・・・・
「うーん、そうだねー、お花の名前とか、色とか・・・分からないよね?」
店員さんはできるだけ、女の子が傷つかないように、その花が何なのか探るしかありませんでした。
女の子は店員さんが何を知りたいのか、理解できていない様子で、じっとそのやさいしい花が出てくるのを待っているようでした。
「よしっ!」
店員さんは決めました。
「あるよ、やさしい花。今、出すからね。」
女の子は本当、っと大喜びです。
「その前に、おじさんの質問に答えてね。」
「うん!」
店員さんは女の子と同じ目線にかがんでから質問しました。
「では、簡単な質問です。やさしい花は何に使いますか?」
女の子は店員さんの目をじっと見て答えました。
「おかあさんの誕生日です。」
店員さんの顔は笑顔でいっぱいになりました。
「じゃー、あなたが、おかあさんに渡す花はこれですよ。」
そう言って近くにあった桃色のスイトピーを一本渡しました。
ずっと笑顔の女の子はさらに一番の笑顔で、ありがとうを言い「やさしい花」を受け取りました。
女の子はお財布ごと店員さんにお金を渡し、店員さんはそこからスイトピー代だけ受け取ると女の子に、ありがとうとを言ってお財布を返しました。
女の子は店の出口で手を振って笑顔で帰って行きました。
店員さんは渡したのと同じ桃色のスイトピーを見て、もう一度 「ありがとう」と呟きました。
やさしい花の意味を教えてくれて・・・
ブラックドッグ・セレナーデ