親分の事件簿~土謎回答編~
「庄屋、ずいぶん立派なオリーブじゃねーか。」
親分はまたオリーブに目を移した。
「そうでございましょう。まだ日本ではあまり見ない品ですよ。」
庄屋は自慢げに親分を見やった。
「ところで庄屋、このオリーブも緑の牧場に手入れを頼んでいるのか?」
「いえいえ、とんでもない、こんな貴重な物を他の者に任せるわけにはいきませんよ。」
庄屋はオリーブを撫でながら、愛おしい口調で答えた。
「ほー、さすが庄屋、これほどまでにオリーブを元気に育てるには、何かコツがあるのかい?」
親分はオリーブを見上げた。
「へい、実はこの木をいただいた時、魔法の粉をちょうだいいたしまして、これを撒きますと植物が元気になるんですよ。何でも石灰とか言う代物で・・・・」
庄屋は言い終える前に、まさかと言う顔に変わっていた。
「そうよ庄屋、つつじ達の元気をなくした犯人は・・・・お前さんだよっ!」
庄屋は目を丸くしていたが、言葉を返せないでいた。親分は畳み込むように話を続けた。
「植物にはそれぞれ合った土壌の条件がある。今回の事件はそれが極端にでちまったんだ。」
「ど、どう言う事なんですか・・・」
庄屋がやっと口を開いた。
「うむ、ツツジ類は酸性土壌を好むのさ、それに対しオリーブはアルカリ土壌を好むんだ。石灰は土壌をアルカリ側に変える作用を持っている。」
「・・・・・・」
庄屋はだんだんと事の真相を理解し始めた。
「地球の生き物にはそれぞれに合った酸度がある、人間は弱酸性だ。例えばアルカリの石鹸で顔や体を洗うとピリピリしたり、突っ張ったりするだろう、だから最近の石鹸は弱酸性の物が主流になってる。」
親分は自分の腕をピシャッと叩いて庄屋を見た。
「酸性の植物にアルカリ性の土を与えれば、だんだん調子も崩しちまうって事だよ。」
「そ、そうだったんですか・・・」
庄屋はガックリと肩を落とした。
「分かったら職人さんを解放してやりな」
親分はクルッと身を返しながら言った。
「さすが、親分、今回も早い解決でしたね。」
ハチが自分の手柄の様に喜んでいる。
「そうだっ!親分、タマネギは酸性ですか、アルカリ性ですか?」
「タマネギは弱酸性だなー、どうしてタマネギなんだ?」
親分が不思議そうにハチの顔を覗き込んだ。
「へい、緑の牧場(グリーンファーム)でタマネギの苗を販売していて、あっしも植えようかなーと思って・・・」
・・・・・・
「ばっきゃろーっ!何でその情報を早く言わねーんだっ!あそこのタマネギの苗は格別なんだぞっ!」
親分の顔は怒りで真っ赤になって、すでに緑の牧場の方向を見据えていた。
「いや、そんなに慌てなくても・・・・って、もー、いなくなってら~。親分の園芸好きときたら・・・・」
「そえれでは、またいつかお会いしましょうね。ハチでした。」
ブラックドッグ・セレナーデ