未来にもグリーンファームあります
2034年 横浜
「お父さん、明日から素粒子放送が始まるから、ハードのセッティング頼んでおいてって言ったでしょ!」
娘が大きな声で怒鳴りながらリビングに入って来た。
「ん、あー、そうだったな・・・」
今はほとんど飲まれなくなった、カフェイン入りのコーヒーを置きながら、私は返事をした。
秋から春まで人気
寄せ植えの高さを出すのにお勧め
「ストック」
「そうだったじゃないでしょっ!いつも、こうなんだからっ!」
娘の口調は強さを増しながらも、どこかあきらめの声とも聞こえる。
「素粒子放送か・・・、地デジ放送が始まってまだ23年だがなー」
「そうよ、これからはディスプレイも、スピーカーもいらないのよ。だから自宅のハードをセッティングして、それぞれの携帯端末があれば、どんな国の、どんな宇宙の、どんな事でも知る事ができるんだからねっ!」
娘はまるで、自分が作ったと言わんばかりに腕組みをして説明を続けた。
「だから、家のハードがセッティングされてないと意味がないのよっ!学校の皆に笑われたら、お父さんのせいだからねっ!」
そんな事で笑うような友達なら、付き合うなと言いたいところだが、今の娘に対しては焼け石に水だろう。
「分かったよ、すぐに手配しておくよ。」
私は置いたコーヒーをまた手に取り、一口すすった。
「そうだなー、地デジが始まった年、父さんはお母さんにプロポーズをしたんだよ。23年前、まだ父さんも若くてな・・・」
「もー、その話は何回も聞いてるわよっ、いつも何かとのろけ話しになるんだから。」
秋、歌の歌詞でもよく使われる
「コスモス」
そう言いながら部屋に戻ろうとする娘を呼び止めた。
「父さん、午後からちょっと出かけるから。」
「勝手に出かければ。」
怒ってはいない様だが、口調がキツイ、この歳頃独特なものだろうか。
「今日、ニュートリノステーション(瞬間移動受信機)にグリーンファームから花のアレンジが届くから、受けとっておいてくれ。」
娘はきょとんとしながら、私を見ている。
「い、いいけど・・・、珍しいはねお父さんが花のアレンジって」
秋から春、寄せ植えの名わき役
「アリッサム」
私が説明しようと、娘の方に目をやるのと同時に、ニュートリノステーションのスイッチが入った。
二人は同時にステーションの方に目をやる
ブーンという音が鳴るとアレンジが転送された。
「綺麗ーっ!」
娘が真っ先にアレンジに飛びついた。
「今日は23年前、お母さんにプロポーズした日なんだよ」
2011年 横浜
「おい、ブラックドッグ、ブラックドッグ、起きろっ!」
私は強い揺れを体に感じて目を覚ました。
上司が私の体をゆすって、声をかけていた。
「お前また仕事中に居眠りかっ、そんなんだからお前は・・・だから・・・なっ・・・・・わかるだろ・・・・・」
上司の声が近くなったり、遠くなったりしながら私はまだ夢心地でいた。
「大丈夫ですよ、お店で、お勧めの花苗の紹介はしておきましたから。」
上司はきょとんとしながら、私を見ている。
「お前なー、仕事しろ・・・」
一年中楽しめる
「ゼラニウム」
ブラックドッグ・セレナーデ